淡々とした声に、ムッシェさんが眉をひそめる。


「そういうわけにはいかないでしょう。
愛し子様はこの砦の主で神の愛し子なんですから」

「ふーん」

「ふーんて・・・」


はーあとムッシェさんがため息をついた。

話に一区切りついたようなので、私はちょいちょいっと彼をつつく。


綺麗な赤と紫の瞳が私をうつしたのを見て、にぱっと笑った。



「ありがとう!」

「?」


問うようにこてんと首を傾げた彼に、身振り手振りを交えて説明する。


「えと、わたし、たべさちぇるだっと!
あなた、わたし、たすうけつ!
ありがとう!!!」


つ、伝わった・・・か?!

ドキドキしながら彼を見れば、静かに1つ頷いた。


「わかんない」

「びゃみゅ!?わかた!?」

「わかんない」

「ひょ?」


彼はじっと私を見つめた。

すうっと、目の色が、黄金に変わる。


私が目を丸くしたとき、頭の中に声が響いた。




〈聞こえる?〉


それは、彼の声で。

異世界言語なのに、意味がわかった。


な、なに?なんなの?これ。

パチパチ瞬きしていると、彼の静かな声が答えた。


〈念話。頭で会話できる。
何が言いたいの〉

念話?ファンタジー小説で聞いたことがあったような・・・。

〈ふぁんたじー小説?そのことが言いたいの〉

違う違う!
獣から助けてくれてありがとうって言いたくて!!

〈ああ〉



すうっと彼の瞳が黄金から元の赤と紫に変わる。


「そういうこと」




今度の声は、ちゃんと音声として聞こえた。

意味はわからなかったけど!