ラギアは私の言葉に一瞬きょとんとして、それから静かに頷いた。



「わかった。露店と食堂、どっちがいい?」

「ろつぇむ?、しょくどー」

「ろ、て、ん」

「ろ、て、ん」

「露店」

「ろてん!」

「よし」

「やったー!」



ヒャッホウと両手を上げてハッとした。



「ろてん、なに!?」

「こっち。
見た方が早い」

「ひょ?」




手を引かれて細い路地を抜けると。




「びゃー!!!」


さっきまでの静かさとは一転して、和気あいあいとした露店がぽつぽつとだけど現れた。





「アサヒの叫び方って独特だよね」

「酒、肩、どくとっく?」

「なんでもない」

「ひょ?」



ラギアが淡々と首を振って、私は不思議に思いつつもキョロキョロとあたりを見渡した。


あちこちから人の声がする。

美味しそうな匂いもする。

熱気が満ち満ちて暑い。




すごい!

さっきまでシャッター通りみたいだったのに、一気にお祭りみたいだ!




「ラギア、ひと、いる、たくさん!なんで?」

「ここは、ここだけは“彼”の領分だから」

「ひょ?」

「おやおやおや。偶然ですねぇ、珍しいお2人さん?」



難しそうな単語に首を傾げたとき、聞き覚えのある声がかけられた。