・・・夕日が、近くにいる?


キョロキョロと辺りを見渡すも、夕日らしき人は見えない。

ただ地元の人らしき人たちがポツポツと通り過ぎるだけだ。




「アサヒ」


挙動不審な私の顔をラギアが覗き込んだ。

綺麗な紫の瞳が私の顔を映す。



「この鳥がどうかしたの」

「・・・夕日と、いたの」

「この鳥が?」

「そう。それで、だから・・・夕日も、いるかと、思って」


ラギアは、じっと私を見つめたまま目を細めた。


「会いたいの?」


誰にと、聞かなかくてもわかった。



会いたいのだろうか。


私に笑いかけてくれた人。
日本語を話す人。
・・・私を嵌めた人。



「びゅん」


へたれた声は、上手く巻き舌になれなかった。




会いたい。

彼の笑顔を見たい。
彼の祖父のことを知りたい。
・・・理由を知りたい。





「そう」


ラギアは静かに、けぶるような長い睫毛を伏せた。

その声音にも瞳にも、はっきりとした感情は映っていなかったけれど。

握る手の力が、ほんの少し強くなった気がした。



「・・・アサヒは、ユウヒの仲間ではないんだったよね」

「ひょ?わたし、夕日、ない?」

「だけど敵でもないってこと?」

「みゅみゅ?ラギア?言う、何?」



わからない単語に目を瞬かせる私に、ラギアはゆるゆると首を振った。





「なんでもない」