それに励まされるように、私は、ラギアに言った。



『ラギア、私は何も知らない』

〈あの男と一緒にいたのはなんで?〉


私の言葉を肯定も否定もせずに、ラギアはただ淡々と聞く。


『窓の外にいて、声をかけられたから』

〈怪しいと思わなかったの〉

『思った。
でも、彼・・・夕日は、私と同郷の人の血を引いているって言ったから』

〈信じたの〉

『私と同じ言葉・・・日本語っていうんだけど、それを話したから』

〈そう。
じゃあ、あの男とは意思疎通ができるんだね〉

『そう、だよ』



淡々とした声。

まるで感情の滲まない声色。


だけど、もしかして、ラギア。




『疑ってる?』

〈さあ〉


否定も肯定もしない、どんな感情も見せない声。


〈ただ、意思疎通ができるのならその男と通じていてもおかしくはないでしょ〉




頭を、殴られた気がした。

温度のない金の瞳が、怖いと思ってしまった。


今日やっとできたささやかな足場が、こんなに早く揺らぐだなんて思ってもみなかった。




『違う!違うよラギア!』


震えそうになる声を励まして、強く言う。

だって、だって、だって!



『夕日に会ったのは今日が初めてなんだよ!
私がこの世界に落っこちたのは、昨日で、だからっ・・・』


ねぇ、ラギア。

ラギアはわかってくれるって信じられない私を、あなたは信じられないよね。


わかる。わかるよ。

自分が信じられないくせに、相手に信じてもらいたいだなんて、図々しいよね。


でもね。

私。



『信じて、くれないかなぁ?』





それでも、信じてほしいんだ。

ごめんね、ラギア。