そうして声を張り上げることまた暫し。


やっと、右側からギィッという音が聞こえた。





「アサヒ」


口を閉じた私を呼んだ声は、可愛らしい女の子の声。

可愛らしいのに、凛と響くその声は。



「アイナ」


牢に似つかわしくない綺麗な金の髪とコバルトブルーの瞳。

私の入っている牢の前に立ったアイナは、可憐な見た目に似合わない感情の伺えない目をしていた。




「あなた、わたくしを騙しましたの?」


昨日ぶりに会ったアイナは、昨日の少女と同じ人物とは思えない無感情な声で問う。


・・・だけど。

私は、首を振る。



ねぇ、アイナ。



「わからない」

「・・・わからない?」


目の温度が僅かに下がる。

それでも、言わないといけない。



「わからない。
ラギア、いう。ラギア、いう!」


伝わるだろうか、こんな拙い言葉で。

だけど、私はまだこの世界に来て二日目なんだ。

多くの単語はわからない。言えない。




だから、どうか。

これで伝わって!






真っ直ぐにアイナの瞳を見つめる。

どうか私の意思が伝わりますようにと願いを込めて。



アイナは、じっと私を見て・・・・・・頷いた。



「・・・そうね、埒があかないものね。
ラギア、来て頂戴」

「アサヒ」

「ラギア!」


無表情な綺麗な顔。

美しい金の瞳は、なんの感情も表してはいなかったけれど、冷たくもなかった。

それは、今までと変わらないものだった。