涙も乾き、私は教室に戻った。
そんな私に送られた多くの鋭い視線は、
「お前、授業中にトイレ行くなよ。うるさいから休憩中に行け」
というような視線だった。
でもすぐにみんなは授業の課題を解き始める。
みんなに笑顔はなかった。
私語もない。
教室は沈黙に支配されていた。
私はそれを見て、
足音をできるだけ立てないように忍び足で自分の席に戻る。
緊張感と言えばいいのか。
自分の席に座ってからもなにか胸を強く押しつけるものがあった。
-キーン・コーン・カーン・コーン―
チャイムが鳴り、
号令をかけるのと同時にみんなの表情は和らいだ。
背中を伸ばしたり、
手を高く上にあげている人が多い。
そう、今日の授業がすべて終わったのだ。
私も机の右側に掛けてあったスクールバックを取り出して、
教科書やノート、筆記用具を入れる。
入れ終わったのと同時に梨恵が話しかけてきた。
「藍!今日は塾とかある?」
私は笑顔で返事をする。
「今日は何もないよ。一緒に帰ろうね!」
「うん!」
塾があるのは火曜日と木曜日。
そして今日は月曜日だった。
校門を出た私と梨恵。
私達は高校から少し遠い所に家があるので、バスで通っている。
別にこの学校では珍しいことではない。
この高校の半数はバス通学だ。