打ち合わせと練習と言っても、２年生たちの中ではストーリーの構成とか役割とかはもう完全に決まってるらしく、言ってしまえば私のことだけを確認するというようなもので、すぐに終わってしまった。



｢そういえばさ、紫織ちゃんって彼氏とか好きな人とか居ないの？｣


打ち合わせ後、多目的室に残って話していると、生人先輩と同じ部活らしい陸空先輩に聞かれた。



｢居ないですね｣


｢そうなの？！｣


｢え、じゃあ俺の彼女になる？｣


｢篠宮チャラい。｣


｢冗談だろ｣


｢でもさ、龍橙好きそうだよね。紫織ちゃん｣


｢あー分かる。｣


｢でもあいつ咲妃さんのこと忘れてないでしょ？｣


｢んー。綺麗な人だったしな｣



｢今結婚もして子供もいるんでしょ？
なんでまだそんな人のこと好きでいられるか分かんないんだけど。｣


｢それはあいつにしか分かんないな。｣





龍橙。

咲妃さん。


さっきから三人の間で飛び交う知らない名前に孤独感を覚える。





｢龍橙って言うのは俺らの友達。千谷龍橙。
咲妃さんって言うのは...｣


気を遣って私に説明してくれる生人先輩の口が少し止まる。


それを悟ったのか陸空先輩が


｢龍橙の元カノ。｣


そう言う。



そして、去年二人は別れたという事も教えてくれた。



｢当日は千谷も裏方手伝ってくれるらしいから紫織ちゃんもすぐ会えるよ｣


｢そうなんですね。｣



その事を聞いても、特に嬉しくともなんともなかった。