「えっ。いいよいいよ。ボールあんまり好きじゃないみたいだし。」
「やってみたら才能あるかもよ?」
「そうかなー。まぁいいや。乃々華。翔くんと遊んでて。」
お父さんはもう練習をしている。
「乃々華ちゃん。なにする?」
人見知りだった私は、なにも話さなかった。
「じゃあ、ボールで遊ぼっか。」
そう翔ちゃんが言ってくれて、少しバレーを教えてもらった。それがすごく楽しくて、毎週行っていた。
それから数年がたった。
私が小学生のバレーボールチームに入ったのもあって、翔ちゃんには全然会っていなかった。
中学に入学して、バレー部に仮入部した。
「よろしくお願いします!」
そう言って入った。バレー部の人数が少すぎて、男女一緒に練習していた。
最初のパスは男子の先輩と組まされた。
「久しぶりだな。乃々華。」
「えっ?」
「覚えてないの?翔だけど。」
「えっ?うそ!翔くん?」
「嘘ついてどうすんだよ。」
翔ちゃんは中3ですぐに引退してしまったけど、よく遊びに来てくれていた。
中学に上がってからは両親のバレーボールチームにもよく行くようになった。
その日はたまたま練習試合だった。
相手チームの人とお父さんが親しげに話していた。
「乃々華!ちょっとこい!」
「はーい!」
「はじめまして。野田です。」
「はじめまして。乃々華です。」
「乃々華ちゃん、クラブチーム入らない?」
「えっ。」
「隣の県でやってて、僕がコーチなんだ。でも、結成したばっかりで全然人がいなくてね。どうかな?」
「私は、やりたいです!お父さん。いい?」
「乃々華がやりたいなら。でも、電車で行ってもらうことになるけど。それでもいいなら。」
「大丈夫!」
「あ、そうそう。この県の子も1人電車で通ってる子がいるよ。中3で部活引退して、バレーの推薦が決まってて、練習させて欲しいって。」
「そうなんですね。」
「明日、見学においでよ。」
「はい!」
次の日、私はお母さんと体育館に見に行った。
「こんにちは。」
「乃々華ちゃん!」
「よろしくお願いします!」
「はーい!えっと、乃々華ちゃんは中学生だから、こっちのコートで。」
「はい。」
反対側のコートを見ると、
「乃々華!」
「翔くん?」
出会いはこんな感じかな?