「私は確かにタカトが好きなんだけど、だからって生身のタカトのプライベートを邪魔するつもりなんてないの。だっていい年をして恋人もいないって方がおかしいじゃない。恋愛もしない、できないなんて芸能人だからってそんな生活どうなのよって話でしょ。今どき、アイドルだって恋愛してるわよ。そのくらいしてなきゃいい曲なんて作れやしないって」
「それはそうなんですけど。・・・そんな風に思ってくれる人ばかりじゃないですよね」
周りの子たちは黙って私と美乃梨さんのやり取りを聞いている。
「そりゃそうだけど、いいじゃない。誰にとっての何が大事なのか考えてみてよ。果菜さんは貴斗のことが好きなんじゃないの?」
「好きですよ。もちろん」
「じゃ覚悟が足りないんじゃないの?タカトの彼女でいたいんならもう少し自信つけないと。それができないのならタカトを私に頂戴。それとも、私が奪えばいい?セクシーよね、あの目元のほくろも、逞しい上腕も」
え?な、何を言ってるの?
「な、何言ってるんですか。嫌です。あげませんよ、っていうか絶対に渡しません。進藤さんは私のですから」
ふふふっと美乃梨さんは笑う。
「初めからそう言えばいいんですよ。自信を持って。貴斗が選んだのは果菜さんなんですから。おどおどしているよりも毅然としていた方がいいと思うんですよね」