「果菜、泣いてもいいけどまず俺の話を聞け」

ぐずぐずと鼻をすする私をあやしながら話し始める。
私はこみ上げてくる涙をこぼさないようにぎゅっと歯を食いしばって頷いた。

「今回のはたぶん大ごとにはならない。ガセネタばかり記事にするような三流以下の週刊誌だ。それに、果菜の個人情報にはほとんど触れていない。もともとネットの掲示板に書かれているような内容が週刊誌に書かれたってだけだ。だから、それは気にしなくていい。何か問題があれば事務所が対応するし」

そうなんだ。
そんなに心配しなくてもいいってこと？
進藤さんの音楽活動も今まで通り？

「たぶん、他の大手週刊誌なんかのマスコミは今まで通り静観すると思う。ただ全く心配がないわけじゃない。水面下で取材が始まるかもしれない。だから、ちょっと先手を打ちたい」

「先手？」
顔を上げて進藤さんの精悍な顔を見つめる。

「ああ、こっちから真剣交際をしている女性がいると情報を出すんだ。果菜は抵抗があるかもしれないけど、その方がお前を守ってやれる。俺も事務所もな」

私は大きく目を見開いた。

「お前は俺を信じて黙って守られていろ」

そう強く言われてしまうと頷くしかないような気になる。

「それに」

進藤さんはニヤリと笑った。
「まさか、俺との関係は遊びだって事は無いよな？」

いやいや、遊びだなんて滅相もない。
私は「真剣です。もちろん」と大きく頷いた。

「じゃ、何も問題はない。後は俺に任せろ」
進藤さんは笑いを深くしてスマートフォンを手に取った。