顔を上げようとしたけれど、進藤さんの両腕が私の背中と頭の後ろに回りがっちりとホールドされてしまう。

「し、進藤さん」

ぎゅっと抱きしめられた胸の中で呼びかける。

「果菜が俺のそばにいることが自然だって思うようになるまでじっと待っていた。
強引に迫ればお前は、俺が芸能人だからとか住む世界が違うとか隣にいちゃいけないとか恋愛対象じゃないとかいろいろ理由をつけていなくなろうとしそうだからな。だが、もうダメだ。離れることは許さない。お前だってもう俺と離れたくないと思ってくれているはずだ。それに、悪いがもう逃げ道はつぶしておいたから」

逃げ道をつぶしたって。
いや、その前にもいろいろ引っかかることを言っていたぞ。

逃げ道をつぶしたって・・・。それって私の逃げ道だよね?
でも、アツシさんの言っていたことが脳裏によみがえる。
公に私を連れ歩いた進藤さん。
まさか。
そういうこと?

いいのかな、私も一歩踏み出してもいいのかな。
胸の奥深くに押し込んでおいた私の恋心。