「そうですね。でも、さすがにこんなにいつも一緒にいたら誰だって慣れますよ」

「そうだ。この家のどの部屋にも果菜の定位置があるよな。
そして、さっき俺は飲み物の種類もどこに持ってきて欲しいのかも具体的に言ってはいない。
酒を飲んで帰宅したのだから、ミネラルウォーターが飲みたいのかもしれない。飲み物を頼みながら寝室に入って行ったのだから寝室に持ってきて欲しかったのかもしれない。
でも、果菜は何も聞かず、いつもの飲み物をいつもの場所に持って来たんだよな。当たり前のように」

笑顔を崩さずに私の隣に座り私の目をじっと見つめる。
最近やっと見慣れてきた彼の深く濃いブラウンの瞳。
でも、こんなに近いのはちょっと無理だ。
心臓の鼓動が早くなり進藤さんに聞こえてしまいそう。

距離を取ろうと腰を浮かそうとしたら、進藤さんの腕が伸びてきて私の腕をグイっと引くから私は彼の大きな胸に飛び込んでしまった。

「果菜はもうこれからずっと俺の隣にいろ」
頭の上から彼の声がする。
進藤さん。今、何て言ったの?