電車に乗って20分経つと、
人が少なくなって息苦しさは
無くなっていった。

玲央が音楽を聴きながら外を
眺めていると、蒼汰がイヤフォン
をぐいっと引っ張った。

「なに?」

「お、怒るな!」

少しオドオドした様子で
蒼汰が言った。

「怒らせる自覚あったんだったら
引っ張るなよ。」

なんなの?ともう1度聞くと
蒼汰はある提案をしてきた。

その提案とは
" 学校まで走っていって、先生に
捕まった方が購買で奢る。"
という内容だった。

「朝からめんどくさいことするの
好きだな、蒼汰。」

あからさまに嫌そうな顔して
反対する玲央。

「スリルあって楽しいじゃん!」

ーそういう問題じゃねえよ。
と心の中で思わず、ツッコむ。

そんなことをぼーっと考えて
いたら、学校前の駅に着いていた。

隣を見ると既に蒼汰はいなくて
改札のほうへ猛スピードで
ダッシュして行ってしまっていた。

「お先にーー!♪♪」

振り返った蒼汰はすごく
嬉しそうだった。

玲央も慌てて、改札を飛び越え
走っていく。
(もちろんスキャンはした◎)

蒼汰はよほど勝ちたいのか、
いつもよりもスピードが
速かった。

追いつけないと思った玲央は
一瞬冷静になって考えた。

ー先生に捕まらなきゃいいんだ
よな?だったら、遅く行っても
アリじゃん笑

と考え、裏口から校舎に入る
ことにした。

裏口に向かう道を歩きながら、
腕時計を見ると8:28だった。

「ちょっとやばいかも。」

玲央はスピードを上げ、昇降口へ
向かった。

壁に隠れながら確認すると先生
らしき姿は見えなかった。

玲央はササッと靴を履き替え
そこからはすごい勢いで教室へ
走っていった。

ガラガラッと音を立てて、教室に
入るとまだHRは始まって
いなかった。

「あー、疲れた。」

鞄を置き、机に寝そべる玲央。

「今日ギリギリじゃん。玲央が
寝坊とか珍しー笑」

そう笑いながら言ったのは、
前の席の 大輝だった。大輝と
蒼汰と玲央は中学の頃からの
仲良し3人組だ。

「寝坊は蒼汰。俺は色々
あったのー。」

はぁ…と深い溜息をつく。

「玲央はともかく、蒼汰は期待を
裏切らないよねー。絶対あいつ
遅刻してくるじゃん笑」

どうせ、教頭に捕まって説教
かまされるだろと笑いながら
大輝は言った。

そして、大輝が言っていた
ことが現実になった。

「お前は何回寝坊したら
気が済むんだ!」

「多分一生懲りませ「なんだと?!」
はい、すみませんでした…。」