その日、私はついてなかった。
朝のニュースの、星座別運勢占いでは
惜しくもではあるけど2位だったのに。
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朝登校してきてすぐ、私のクラスの
数学の担当に呼び止められて
授業ノートが出ていないと叱られ、
急いで教室まで取りに行こうとして走ると
走るなとまた叱られ。
しかも教室にはそのノートは無いし。
男子がこぼしたジュースがセーターにかかっちゃうし!
あーあ、って
セーターを脱いで窓際に干していたら
風で飛ばされていってしまうし…
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「もうーっ!今日ついてないったらありゃしない!!」
「まあまあ、たまたまでしょ〜」
「そうだよ、運が悪かっただけだよ」
少し慰めてくれてるこの2人は、
今年の入学式に友達になった、
仲 梨花ちゃんと
島村 春ちゃん。
地元から離れて進学してきた私にとっては
嬉しくてしょうがない存在の2人なのだ。
「それで くの、数学のノート見つかったの?」
春ちゃんは言った。
私は 奥野 けい という名前を略して
くの、と呼ばれている。
「それがね、どこ探しても無いの」
「そういうば昨日、音楽の授業中に
数学の課題やってなかった?」
美味しそうな卵焼きを食べた後、
梨花ちゃんは言った。
「あっ!!
そうだった!!!」
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お弁当箱を片付けて
私は急いで音楽室へ向かった。
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音楽室は普段、授業と放課後以外は
生徒立ち入り禁止、というか
鍵がかかっている。
先生曰く、授業をサボって集まる人が
多いからだそう。
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古びた木製のドアのドアノブに手をかける。
開いてますように…!
「あっ 開いた」
開けると、ほわっと暖房の暖かみを感じた。
さっきまで誰かいたのかな?
暖房を消してあげようとも思ったが、
あいにくセーターは飛ばされて
ブレザーだけじゃ寒すぎたので
暖房を付けたままにした。
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「おっ あった」
いつも音楽の授業で私が座る机の中に
奴は入っていた。
こいつのおかげでどれだけ私が
数学の担当に叱られたと思ってるんだ!
まあ見つかったので良かったとする。
ガチャッ
不意に扉が開き、
咄嗟に私は机の影に隠れた。
「誰かいるのかー?」
ひゃっ こっち来たっ
足を引っ込めようとすると音が出てしまった。
これはヤバイっ…!
「誰だ?」
ごめんなさいっ!!
心の中でとにかく過ぎ去ってくれることを願った。
もう無理っ バレる!!
途端、こちらへ向かってくる人と逆方向の、
私の後ろから声がした。
「俺です」