私の前には細身の男の子が座ってる。
名前は津田君。
亜古ちゃんと同じ中学校らしい。
さっきなんて亜古ちゃんに「うるさいから間に挟んで話さないで。」って怒られた。
すっごく目つきが悪くて強面だけど、キレイな声をしていた。
っていうのが第一印象。
「ねぇ、」
突然の前からの声にビックリした。
「なっ、なに?」
「…プリント。」
不機嫌そうな顔で渡された。
「ごめんなさい。」
「別に、」
そう言って背中を向けた津田君。
うん、やっぱりいい声だ。
話した内容なんてこれっぽっちも覚えてない。
ただただ津田君はステキな声の持ち主だと言うことだけは覚えた。
そんな入学式だった。