「呼び捨てでいいし、あと敬語もいいから」
「え!」
『あ、ここ左』と先導してくれる須藤さんはそう言ったけど…。
年上の人にタメ口って、どういう関係であっても苦手だ。
ものすごく親しいならまだしも。
須藤さんは会社の先輩。
それに、背も私よりはるかに高いし。て、これは関係ないか。
「司さん、でいいですか?取り敢えず…」
そう呼ぶと、やっぱり彼は不服そうな表情。
「呼び捨てでいいって。それに敬語も」
「いや、私苦手なんですよ。会社の人にタメ口とか敬語とか」
自分で言ってて思ったけど、真面目か。
でも、しょうがないじゃない。そう言う性分なんだから。
「うーん、まあそれはそれでいいか」
良かった…。
そう、安心したのも束の間。
「よし、ここが店だから。よろしく」
目の前には、落ち着いた雰囲気の居酒屋さんらしき建物。