太ももの上にハンカチを広げ、お弁当箱を開ける。

早く胃袋を満たしたくて、箸を持つと。


先輩がこてん、と。私の肩にもたれかかってきた。


欠伸(あくび)をした先輩の歯が、八重歯だってこと。今初めて知った。



「先輩、起きてよ。これじゃあご飯食べられない」


「いいよ、俺のことは気にせずに、食べて。」


「違う、手が動かせられなくて困ってるの」


「それくらい我慢してよ。
 ほんとは天沢ちゃんに膝枕してもらう予定だったのに。
 お弁当箱に太ももとられちゃった」


「知りませんよ……そんなこと」



先輩の眠そうな声のせいかな。


あまり強く言えない自分がいる。


もたれていた姿勢を正す先輩は、目を擦りながら今にも寝てしまいそうだ。


そんな先輩に、ちょっと情が湧いて。

お弁当箱の中身をさっさと掻き込む。

食べ終えて、ハンカチで包み、太ももからお弁当箱を退かすと。



「先輩、いいですよ」


置くものがなくなった真っ白な太ももを、ぽんぽんと叩いて、ミア先輩の眠気を誘う。