リングケースから指輪をはずし、私の左手にそれをはめてくれた。

今しているペアのリングともよく合う。


「あの、どうしてこのデザインを?」

「モモがこれを見るときの目が違ってましたから」

「え、」

「モモの事は何でもよく見ているんですよ」


ジュンさんが私の事をよくわかるのは、私をたくさん見ていてくれているからなんだ。


私はジュンさんに伝えたいことがある。

いつも私の事を見守ってくれているジュンさんに。


「ジュンさん…、」

「改まってなんですか?…また、愛の告白ですか?」


茶化すように言ったけど。まさにそう。

だって今から本当に気持ちを伝えようとしている。

しかも今まで言った事ない言葉を…


「モモ、コーヒーじゃなくてお酒にしましょうか?」

「え?あの…」


ミニワインセラーから一本ワインを取り出すジュンさん。

ジュンさんのお気に入りのワイン。


「うわーそれっ私大好きですっ」

「モモは一杯だけですよ?それに…寝てしまってはもったいないですしね」


寝たらもったいないの意味はさておき、飲めるのなら嬉しい。


二人でグラスを重ね、飲むワイン。

もちろんワインはおいしいのだけれど、今日ジュンさんはプロポーズしてくれて、指輪をくれて、この先の人生をともに歩んでいこうと言ってくれた。

あ、それは私の方が先にお願いしたんだっけ。


「ジュンさん、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ」

「えと、それで…」


なんか唐突にこの言葉を言うのもおかしい。

だけど、きっと私が何か言おうとしてると思ったから言いやすいようにワインあけてくれたんだろうけど。


「モモ、?」


静かに置かれたワイングラス。


「モモの言葉を待ってたんですが、もうそろそろ待てないのですが」


困ったような顔をするジュンさん。



―――待てない


今日はずっと紳士的に近くに寄り添うだけで、キスさえまだしていない。

その言葉に私は…

待てないのは私も一緒で、こんな気持ちにさせられるのはジュンさんだけ。


「ワインはもう、いいですよね?」

「…はい」