「こちらはずっと前からプロポーズしてるつもりなんですけどね?モモには一向に伝わらなくて」
「え、」
「波崎さんにも叱られましたよ。モモは鈍感なんだから直接的な表現じゃないと一生わからないって」
望亜奈さんたらそんな事、ジュンさんに言ってたんだ。
ていうか一生ってひどすぎる。
「…そんなこと、」
あるか。何度もしてくれてたってジュンさん今も言ってたしね。
だってプロポーズの言葉って結婚という二文字が入ってるものだとばかり思ってたから。
「天ケ瀬桃華さん、私と結婚してくれますか?」
ソファに座る私の前に片膝をついて言うジュンさん。
その手の上に乗せられていたのはブルーの箱。
その箱を手の上に乗せたままリボンを解く。
中におさめられていたのはこの前お店で見たエンゲージリング。
私がひそかに一番かわいいと思っていたもの。
「これ…?」
「モモ、返事は?」
「え?、あっはいっあのこちらこそ、よろしくお願いします」
私のその言葉を聞いてため息をつくジュンさん。
また変な事言っちゃった?
「はぁー。ここ最近で一番緊張した……」
「え?」
「モモがプロポーズしても反応してくれないから、いい返事がもらえないのかとね。けっこう落ち込んでたんですよ」
「や、あの。そういうつもりじゃなくて…」
気付かなかっただけです、プロポーズの言葉って。とは言えず
「本人がプロポーズの言葉と気付いてないと波崎さんに聞いて驚きましたが、妙に納得しましたけど」
「……すみません」
「それで、さっそくですが三十日モモを実家に送って、ご両親にご挨拶をするお時間をいただきたいんですが」
「たぶん大丈夫だと思います。あ、まだ早い時間なのでお母さんにメールを……」
「あぁもう連絡はしてありますから」
「へ?」
「お母様にご連絡差し上げてます」
またもや事後報告。
ていうか、今プロポーズされて返事も今したのに?
「私が断らないってわかってましたね?ジュンさん」
「自信がなければしませんよ?プロポーズなんて一生に一度の事なんですから」
あぁやっぱり、いつまでたっても先回りされちゃうんだ。
だけどそんなのも嬉しいって私はすっかりジュンさんに捕われてる。