家についてすぐにコーヒーを淹れる。


「あ、ジュンさんご飯食べました?」

「電車の中で食べました」


良かった。
何か作るにも今週も全然作ってないから食材が何もない。

電車の中ってことは駅弁かなんかかな?

それにしても言ってくれたらよかったのに。


「あージュンさんっ、どうして帰りの電車の時間教えてくれなかったですか?」

「だからさっき言ったでしょう?波崎さんに伝えたと」

「でもっ私は聞いてませんっ」

「そうでしょうね?言ったらモモ逃げたでしょう?」

「う…」


そりゃあ逃げましたよ。


「別にうちの会社は社内恋愛禁止じゃないんですから」

「そうですけど…まぁどうせもうバレちゃいましたしね」

「いやでしたか?」

「そうじゃないですけど…」


私がどこかに行っちゃうかもしれないなんてそんな事はないのにジュンさんが心配だという。

それは私が自分に自信がなくてジュンさんの彼女ですって胸を張って言えないから?

だけど


「ジュンさん、私っ、あの頃の私とは違います」

「あの頃?」

「はいっ。主任に憧れて好きだったあの頃とはもう…」


違う。上司に憧れていたあの頃とは確かに違う気持ち。


「それは?」


優しく問うように見つめながら聞くジュンさん。

恥かしい。だけど、その目をしっかりと見つめて言う。


「私とずっと一緒にいてくれますか?」

「もちろんですよ」


この言葉じゃ…うまく伝わってない。

ニコニコと微笑んで私の頭を撫でている。

だから、そうじゃなくて。


「また来年も?」

「はい」

「その先もずっとですよ?」

「ええ、もちろんです」

「意味、わかってます?」

「モモこそ、わかってるんですか?」


わかってるから聞いてるんですけど?

ジュンさんこそ、この先ずっとって言ったらそういう意味なんだけど。


「光栄ですね、モモからプロポーズの言葉をもらえるなんて」

「え、」

「おや、自覚なし、ですか?」


プロポーズしちゃったの?私?

ってことは逆プロポーズ?

早く結婚してよ!みたいな?


「や、あの…それは……」