いつのまにか結構時間が経っていて、そろそろお開きらしい。


「桃ちゃんもちょっと口紅とれてるから化粧室一緒に行こう?」

「え?あ、はい」


別に後は帰るだけだからいいんだけど……なんて女子力の低い事を言うと望亜奈さんに怒られるから黙ってついて行く。

化粧室で軽くパウダーを叩いてグロスを塗り直す。

酔っているおかげでチークはいらなそう。


「はいこれ」と言って渡してくれたのは緑色のジェリー状の粒。おなかの中から匂いのもとを消すとかいうやつ。

「彼に会うのに酒臭いのはねぇ?」


望亜奈さんは彼と会うらしい。私はそれのついでにくれたのかな?


「どんな望亜奈さんでも、彼には関係ないですよ?」

「ま、それはわかってるけど一応ね?身だしなみって言うの?」


望亜奈さんのこういう所、女子力の高さをうかがえる。

離れてるから普段はいいなんて。

むしろ離れているからこそ、日々努力を怠っちゃいけないのかもしれない。

私も見習わないといけない。


「あ、これお腹の中からスースーしますね?」

「っふふ、そうなのよね。ま、全部消えるわけじゃないけど気持ちの問題?」

「なるほど。私もこれ今度買ってみます」

「そろそろ時間かな?、じゃ、席戻ろうか」

「はい」


綺麗にメイクを直した望亜奈さんと一緒に私は貸し切りの部屋に戻る。

なんだか部屋が騒がしい気がするんだけど……


「なんだ、もう着いたんだ。登場見たかったのに」


着いた?誰が?

後、来てない人なんていたっけ?

頭の中でお酌していった人を思い浮かべる。

だけど、全員したよなと思いなおした時、望亜奈さんがドアを開けた。


そこでみんなに囲まれていたのは、見覚えのある後ろ姿。


「主任、早かったですね?」

「ジュ、…しゅ、主任っ?!」


ジュンさんって言いそうになって慌てて主任と言い直す。


半年前までここに居たんだから全員知り合いで、意外な人の登場でみんな主任を取り囲むようにしていた。

あいかわらずその中心は女の子たちで「今日はどうしたんですか?」なんて聞かれてる。

私たちに気付いたジュンさんは、


「今日はみなさんにご挨拶と、彼女を迎えに来ただけですから」


「「「彼女?!」」」