「…天ケ瀬ちゃんの左手の」
ずっと首からチャーンに下げていたそれを外されて薬指にはめてくれたジュンさん。
その時からずっとはずさずにそのまま。
望亜奈さんには聞かれたけど、それ以外では誰にも何も言われなかったからみんな気にしてないんだと思ってた。
「指輪、ですか?」
「うん、そう。その指輪――」
「あーーー。鈴やん、一人だけで聞こうとしてズルイ!」
隣で飲んでいた別の営業が急に話に入ってきた。
さっきまで正面に座ってる人と話ししてたみたいだったのに。
「だってこれ、気になるだろ?」
「だよな、俺も気になってたけどセクハラだって言われそうで聞けずにいた」
「そうですよ、セクハラですよ!私も聞きたかったんですから混ぜてください」
そう言って次に話に入ってきたのは事務の人。
あっという間に三人に囲まれるようになった私。
「…えと、?」
そこで店舗営業の終わったカウンタースタッフたちが入ってきた。
私を見つけた望亜奈さんがこっちにやってくる。
助かった。と思った。これでこの質問から逃げられる、と。
「おつかれさまでーす。…あれ?みんなどうしたんですか?」
「波崎さん、おつかれ。や、今ねみんなで天ケ瀬ちゃんの薬指の指輪の話を聞いてた所」
「あぁ、なるほど」
え?それだけ?
望亜奈さん助けてくれないの?
「なるほどってことは、波崎さんは知ってるってことかな?」
「まぁ、そうですね。…でも私の口からは」
えええええ、何それ思わせぶりなっ
そんな事言ったら余計食いついて……
「ねね、いつから?いつから付き合ってんの?」
「相手は?どんな人?年上?年下?…まさか社内恋愛じゃないよね?」
……!!
いや、社内恋愛といえばそうだけど違うと言えば違うというか
望亜奈さんはニヤニヤしながら私がどう答えるのか見ている。
助けてくれる気は全くないらしい……
「え、と。あの半年ぐらい前からで…」
「それで?」
「あー年上の方です……」
「「「やっぱり!」」」
なにそのやっぱりって。しかも全員声そろってたし。