「あーあ……」
口の端からだらしない言葉が零れた。
喃語のような意味が読みとりにくいその言葉は、そのまま誰にも拾われず生温い部屋の空気に溶けていった。
私は虚しくなって、背面からベッドに倒れ込んだ。
私はまだ中学生で、感情も身体も何かもが未熟で──その癖、もう大人になっているような気分で背伸びをしていたのだ。
浅はかだった。
どうして、大学生の彼氏なんて作ってしまったのだろう。
不幸中の幸わいだったのが、彼が僅かな良心から挿入しなかったことだ。
でも私の心を破壊するには充分過ぎた。
私は唇を噛みながら体を起こし、着替えを再開した。
服をすべて身にまとい、鞄を掴む。
ふと、棚に置きっぱなしになっていた携帯に手を伸ばした。
スマホの普及率が高まっており、周りの子も大抵指を画面上で滑らせている中でまだフィーチャーフォンを使用している。
それがチカチカと青白い光を放ち、ディスプレイに表示された文字を見て私は直ぐに携帯を開いた。
《Sara》
その文字に私の口角が自然と上がった。
それは、私の唯一の支えだった。