肩にかかる黒髪が邪魔で掻き分けると、赤い花がいくつも首に咲いているのが見えて私は顔を顰め、掻き分けた手を退かした。
すると、髪は支えを失いさらり、流れ落ちて元に戻った。
肌に吸い付く程に毎日着ているカッターシャツを、桃色がかった部屋の中で羽織り、何故か震えている指先でひとつひとつボタンを止めた。
深く息を吸って吐いて落ち着かせようとしても、その震えは止まらなかった。
やっとすべてのボタンを穴に入れシャツを着替え終わったと思うと、首の辺りに違和感を感じて直ぐにボタンの並びを見た。
……ああ。
私は心の中で呟いた。
ボタンがずれていたのだ。
私は仕方なくすべてのボタンを外し、再びあられもない姿になる。
そんな私の愚行を見守る目はひとつも無い。
別に見られたくもないが、こんな時に孤独に背をなぞられている気分になる。