惚れやすいんです、あたし




そして次の日は恋人が楽しむ日。

クリスマスイブ。



「優からの別れようメッセージにも返信ないとか鼻くそは鼻くそだな、そんな男別れて正解」



イブは涼介くんと勉強です。


「鼻くそはもういいとして、涼介くんさよくイブの日にあたしの勉強受け入れたよね。まぢで彼女いないの?」


「いない。別にイブだからって恋人と過ごすって訳ではないだろ」


「ふーん、じゃあ今年のイブはあたしと過ごす事になるね」


ニヤっとして涼介くんを見た。


「お前勘違いすんなよ?
別に優と過ごしたいからって今日来たわけじゃないからな?」


……なっ、


そう言って涼介くんはあたしの頭を赤ペンで優しく叩いた。



「なっ、何言ってんの?!

全然違うし。勘違いしてるのはそっちだし!涼介くんまぢ自意識過剰すぎる」


あたしと過ごしたいから今日来たんでしょう〜。のニヤニヤじゃないし!


全く…。

変な汗が出る。








「……でもさ、気分転換に外行く?」


「へ?」


それって…涼介くんとお出かけするって事?



「優フラれたばっかで可哀想だしな」
そう言って「ははは」と笑う涼介くん。



「……別にいいもん」


むかつく。やっぱり涼介くんは意地悪だ。



「ごめんって、」


ポン と優しく頭に乗せられた大きな手。

意地悪なのか、優しいのかよく分かんないよ。







でも…クリスマスイブ限定のクリスマスツリー見に行きたいしな……。



「本当に一緒に行ってくれるの?」


「うん。だけどこの問題全部解き終わってからな」


….……ううう、

やっぱりそう簡単にはいかなかったか。









そして、



「っっあーー!終わったーーっ」


やっと全部解き終わり、涼介くんの採点も終わった。




「おしっ、行くか」


「うんっ」



まさかのまさかの涼介くんとのお出かけです。


あの勉強鬼の涼介くんとお出かけなんてもちろん初めてでなんか変な感じ。



お母さんには涼介くんから言ってくれたみたいで、2人して家を出た。





外に出るともちろん、



「う…さ、寒い」


季節は12月半ば。そりゃあ寒い。



「ヒートテック着てねーの?俺極暖だからそんなに寒くないよ」


そう言ってわざと袖部分をあたしに見せつけてきた。

なんっっでこんな嫌味な事してくるかなー。



「別にいいし、移動は涼介くんの車だから」


「あっそ。

…それより優どこ行きたかったんだっけ?」


「ほっ、本当に連れてってくれるの?」


「鼻くそと行くんだーってワクワクしてたじゃん」


「うん。クリスマスイブ限定の大きなライトアップされてるクリスマスツリーがあるんだけど…」



……は!忘れてた!


実はそこ、カップルにとても有名なスポットでそのツリーを一緒に見た男女は一生共に過ごせるっていう言い伝えがある。


あたしはその時は一輝くんと付き合ってたから良かったけど……、



「涼介くんとかーーー…」








「なに、俺とじゃ不満なのかよ」



そう言ってあたしのほっぺを両手でつねる。



「いっ、痛いってば!!

そういう訳じゃなくって……その、言い伝えがあって……その…」


「言い伝え?」


「うう……もういい…っ!
何でもない!!早くツリー見に行こう!!」



言ってしまったら変な空気になりそうで、言うのをやめた。



「まーいいや。じゃあ行くからシートベルトちゃんとしろよ」


「安全運転してよね」


「うるさいガキが」


「うっわ…先生モード終わってからなんか涼介くん口悪くなってるし!」


「モードなんかじゃねーよ、先生だ」



とか言いつつ、ちゃんと安全運転な涼介くん。





車を有料駐車場に停め、涼介くんと2人で並んで歩く。


周りはクリスマスモード全開だ。

街中はイルミネーションで彩られ、

クリスマスソングに、サンタコスをしているパリピさん達がたくさん騒いでいる。


そしてカップルだらけ。



「優が言ってたツリーってあれ?」


「わぁ〜!そうそう、あれ!」


涼介くんが指指す方を見ると、とっても大きいツリーがあたし達の目の前でキラキラ輝いている。



にしても…カップル多すぎて人混みが凄い。



「なぁ、何でこんなにこのツリー人気なの?カップルだらけじゃん」


「え?あ、あれじゃない?ろ、ロマンチックだからじゃないのっ?」








このツリーをカップルで見ると一生共に過ごせる。って言い伝え言える訳ない!!



「でも綺麗だな」



そう言う涼介くんの口から真っ白の息が出ていた。


ふと横にいる涼介くんの顔を見ると、鼻がすごく真っ赤に染まっていた。



「涼介くん鼻トナカイみたいだよ」


「極暖着ててもさすが寒いよ」



確かにすごく寒い…

移動が車だからって舐めてた。ダウン着てこればよかった…。



「優も耳とか真っ赤」



涼介くんはそう言ってあたしの両耳を両手で包み込んだ。


えっ…


目の前に涼介くんの顔。



「ちょ…、涼介くんこれじゃあ何も聞こえないよ」


だかど両耳は涼介くんの手で包まれすごく温かい。



「ははっ、」


そう笑う涼介くん。


……な、ななな何だこれ。

涼介くんは他の女の子にもこんな感じなのか?






「だっ、だから聞こえないって」


何故かものすごく恥ずかしくなって涼介くんの手を振り払う。





すると、


「あれ?優?」


…………………え、


声のする方を振り返るとそこには、


「え!やっぱり優じゃん!ここで会うとはね」



そこには彼氏と来ていた胡桃がいた。


最悪…



「てか、ちょっと優!どなたか紹介してよ!あたしさっきから気になってるんだけど」


あたしの耳元でこっそりと言う。


ほらぁ…やっぱりこうなると思った。