惚れやすいんです、あたし




え……なにこれ。

LINEで一方的に言われても、なんだけど…


友達に戻らない?って、そもそもあたし達友達じゃなかったよね?

幸せにできやんからってなに?

そんなの綺麗事にしか聞こえないんですけど。



何なんだろう、この気持ち。

あたし……振られたんだよね?



「納得できない…」


あたしの目から一粒の涙が流れていた。


この涙はなに?

初めて振られたショック?



「……っ、悔しい……」




いや、ショックとかじゃない。

何もかも自分勝手で、一方的で、そんな彼に怒りさえ感じて……腹が立つ。

腹が立ち過ぎて涙が止まらない。



あんな奴の為に流してるんじゃない。


あたしはそう、必死に頭の中で言い続けた。














「……宮本さん?」






えっ…

とっさに涙を拭いて、声のする方を向くとそこには同じクラスの坂本健太(さかもと けんた)くんがドアの前で驚いた顔して立っていた。


坂本くん……話したことないや。

なんかおとなしくて、あたしとは絶対話し合わなさそうだし。


てか、泣いてるの見られた?



「僕…わ、忘れ物取りに来ただけだから」



そう言って自分の席に置いてあった携帯を持って出て行こうとした時だった。





「だ、大丈夫ですか?」


「え?」


まさか心配されるとは思わなくて返答に困る。



「い、いやっ…何でもないです。話した事もない奴に心配されても迷惑でしたね」



坂本くんはそう言って顔を隠すように鼻に手を持っていった。







話した事もないあたしに、しかも振られた状態のあたしに声をかけてくれるなんて。



「そんな事ないよ、ありがとう」


あたしはそう言って坂本くんに笑顔を向けた。



「別に、僕は何も…っ」


「ううん、ありがとう。

にしても坂本くん…携帯忘れるなんて…しかもおもいっきり机の上に置いてあるじゃん!」



「あははっ」と笑う。


だって可笑しいんだもん。



「そんな笑わなくても…」


「だって、普通さそんな分かりやすく置いてあるのに帰る時気づかない?はははっ、坂本くんって真面目そうで意外と抜けてるんだね」


「でも…、元気になったみたいでよかった」


坂本くんは、ふっ と小さく笑った。



坂本くんも笑うんだ。

いつも教室では本読んでたり、友達といても難しそうな話しばっかりしててあまり笑顔なんて見たことがなかった。





「……じゃあ、僕帰ります。」


「またね坂本くん」


「……」



まるで逃げるかのように去ってしまった。




すると、


「優っ、ごめんお待たせ…!」


坂本くんとすれ違うように胡桃の委員会が終わり教室に入ってきた。



「胡桃、帰ろう」





あたしは涙を流しながら、一輝くんに返信していた。


《いいよ、あたし達終わろう。》


どうせ返事は帰ってこないだろう。

もうこれで終わった。


凄く謎で、理由も分からないまま呆気なく。






帰り道、一輝くんとの出来事を胡桃に全て話した。

LINEの内容、

坂本くんの事も話した。



「腹立つ…なんなのよ一輝の奴!

理由は何?会わずにLINEではい終了?信じられないんだけど!あたし一輝に聞いてみる」


「ま、待って胡桃っ!それはいい」


「何で?あたしが納得いかないんだけど!てか優
気にならないの?返事なかった事とかさ」


「…気になるよ、気になるけどもういいの。もうそのまま別れる」



どうせ話したとしても別れるんだし。



「本当に優はそれでいいの?」


「うん。もう次に切り替える」


「……やっぱり気になったりしたら言ってね。あたしすぐ一輝に言ってやるから」


「ありがとう、胡桃」



もういい。



あまりすっきりしないけど、もういい。






「それにしても坂本くんいい奴じゃん」


「ね?意外だったわ〜。今度から話しかけてみようかな?」


「お?次は坂本くん意識したりして」


ニヤニヤする胡桃にあたしは胡桃の頭にチョップを入れた。


「もうね、しばらく恋愛はいいの」


「………」


「……?」


「……………………は!?え?!ゆ、優どうしたの?!そんな事言うなんて…何か変なものでも食べた?優が恋愛しないなんて」


「ううん、本気。もうしばらくいいや」



簡単に惚れてすぐ好きになってすぐ付き合ってすぐ別れる。

自分の性格が嫌になる。

もう疲れちゃった。











一輝くんのことは本気で好きだったのだろうかーー。


1ヶ月もしないであたしの恋愛が終わった。









そして次の日は恋人が楽しむ日。

クリスマスイブ。



「優からの別れようメッセージにも返信ないとか鼻くそは鼻くそだな、そんな男別れて正解」



イブは涼介くんと勉強です。


「鼻くそはもういいとして、涼介くんさよくイブの日にあたしの勉強受け入れたよね。まぢで彼女いないの?」


「いない。別にイブだからって恋人と過ごすって訳ではないだろ」


「ふーん、じゃあ今年のイブはあたしと過ごす事になるね」


ニヤっとして涼介くんを見た。


「お前勘違いすんなよ?
別に優と過ごしたいからって今日来たわけじゃないからな?」


……なっ、


そう言って涼介くんはあたしの頭を赤ペンで優しく叩いた。



「なっ、何言ってんの?!

全然違うし。勘違いしてるのはそっちだし!涼介くんまぢ自意識過剰すぎる」


あたしと過ごしたいから今日来たんでしょう〜。のニヤニヤじゃないし!


全く…。

変な汗が出る。








「……でもさ、気分転換に外行く?」


「へ?」


それって…涼介くんとお出かけするって事?



「優フラれたばっかで可哀想だしな」
そう言って「ははは」と笑う涼介くん。



「……別にいいもん」


むかつく。やっぱり涼介くんは意地悪だ。



「ごめんって、」


ポン と優しく頭に乗せられた大きな手。

意地悪なのか、優しいのかよく分かんないよ。