「じゃあ……俺と付き合う?」
「うん……」
実はこの男出会ってまだ1週間しか経っていない。
…そもそも何故こうなったのかというと、話しは1週間前に遡る。
あたしの名前は宮本優(みやもと ゆう)
高校2年生の17歳。至って普通の女子高生だ。
オシャレだって敏感。
髪も高校生になってから伸ばしはじめ、前髪は流し焦げ茶色に染めたまに巻いている。
ネイルだって好き。
「おーい、優聞いてる?
そんなネイルしてちゃ面接落ちるぞ」
「まだ1年後の話しじゃん…」
と、ネイルについてグチグチ文句を言ってくるのは1年前からあたしの家庭教師をしている大学生の藤田涼介(ふじた りょうすけ)くん。
あたしはこれでも一応志望大学に合格する為に真面目に家庭教師の涼介くんの勉強を受けている。
「涼介くん疲れた…」
うーん、と両手を伸ばし背中を伸ばす。
うはっ 気持ちいい…
それだけ勉強に集中してたって事だ。
「少し休むか」
涼介くんの一言であたしは真っ先に机からベッドにダイブした。
「おい優お前そのまま寝る気だろ」
「んー?聞こえない」
「はぁ…ったく、俺が優のお母さんに怒られるっつの」
とポリポリ と最近黒に染めたばかりの髪を掻く。
あたしはその様子をジッと見る。
「……なに」
「いや、涼介くんさ何で黒染めしちゃったの?あたし的に茶髪のがかっこよかったけどなー」
「涼介くんの黒髪に女の子幻滅だよきっと」と後から付け足す。
正直涼介くんはモテると思う。
勉強中だって結構携帯うるさいし…
「別に優にかっこいいって思われなくてもいいし、正直黒髪のがモテてますー。てか自分はどうなの?彼氏と」
ドキッ…
まさか話題があたしの彼氏の話しになるとは、
「え、まさか……」
「……はい、そのまさかでございます。」
あーあ、これだから話したくなかったんだよなぁ。
「今度は何週間で別れたんだよ」
「……に、2週間」
「はやっ、まぁ過去最短の3日には敵わんか」
「うっ、うるさい…!」
そうなんです、あたし恋愛がどうも上手くないみたいで長続きしないんです。
「優はいつもどんな相手か知ろうとしないですぐ付き合うからダメなんだよ!」
「知ろうとしてるよ…っ」
「は?どこが。今回の相手だって知り合ってどのくらいで付き合った?ほら、言ってみ」
どんどんとあたしとの距離を詰めてくる涼介くん。
近過ぎて思わず頭にチョップをしてしまった。
「っって!!!!」
「涼介くんが悪いんだからねっ!そうやって意地悪してくるから…っ」
「へーへー、悪うござんした。
ま、どーせいつもの事知り合って数日とかだろ」
「………」
図星過ぎて何も言い返せない。
「仕方ないじゃん。
あたし、惚れっぽいんだもん……」
「好き」って言われたらすぐ相手の事意識しちゃって好きになっちゃうんだもん。
「じゃあ何で俺の事は好きになんねーんだろうな?」
そう言ってニヤニヤした顔をする涼介くん。
「涼介くんは恋愛対象外ですから!」
ごめん、涼介くん。
今までで1度も意識した事ないわ…
*
そして次の日。
「わぁ、今回の優の爪可愛いっ」
そう言ってベタ褒めしてくれるのは、同じクラスで友達の胡桃(くるみ)
名前の通り胡桃色の髪色をしていてボブカットが似合う愛らしい女の子だ。
「ありがとうっ、でもさ…涼介くんがそんなんじゃ面接落ちるぞって言うんだよ?まだ早いのにさ」
「ふーん」
急に口元だけニヤつく胡桃。
「え、なに…どうしたの胡桃」
「その家庭教師の涼介くんって恋愛対象じゃないって言うけどさ、優から話し聞く時その先生の話し多めだけど?本当意識してないの?」
な、何をバカな…っ、
「やめてよ!胡桃っ、涼介くんはただの家庭教師。あたしの悩みとか聞いてくれるお兄ちゃんみたいな感じだし…!」
「なーんだ、つまんないのっ」
ぷくっ と頬を膨らませる胡桃。
全く……、変に焦ったって。
「じゃあさ優、いい人紹介してあげる」
「え?」
胡桃がなにやらニヤニヤして携帯を弄っている。
「ほら優またすぐ別れちゃったでしょ?
今度は、本気になれるんじゃないかなー?」
本気の恋愛……?
あたしいつも本気だけど、な…
「じゃんっ」と携帯の画面をあたしに見せた。
「え…だだだ誰この人……っ、」
「んふふー♪」
胡桃の携帯画面から映るその男性は、もろあたしのドドドドタイプな男性だ。
茶髪に片耳ピアス。
笑った時に見える八重歯にきれいな二重。
「……かっこいい」
「でっしょ?
あたしのね中学の同級生で、この間たまたま駅で会ったんだ。それで彼女最近なかなかできないって言ってたから優を紹介しようと思って」
「……ほ、ほう」
「ど?優も悪くないでしょ?てかむしろタイプでしょ?」
さすが胡桃、分かってらっしゃる。
あたしは高速で首を縦に動かした。