惚れやすいんです、あたし





すると、坂本くん達がやってきた。



「坂本くん達遅いよ〜」


「ごめんっ、色々見てたら止まらなくって」



そう言って買ってきたお土産の袋をあたしに向けた。





「じゃあ俺行くな。」


「あ、うん。ありがとうね!」



あたしがそう言うと涼介くんは片手を上げて走っていった。









「宮本さんあのさ…」



坂本くんが何やら袋をあさりだす。




そして、


「これ….宮本さんにあげる」


「え?」



そこには可愛いハートのアロマキャンドル。








「えっ、そんな…申し訳ないよ。家族に買ってきたお土産なんでしょ?」


「…違うよ。宮本さんに買ったんだ」



……っ、



「あたしに?」


「うん。だから受け取って」



あたしと一緒に来てるのに、あたしの為に買ってきてくれるなんて。


素直に嬉しい。



「ありがとう」


あたしはそれを受け取った。










ふと坂本くんを見ると顔が真っ赤に染まっていた。


「ははっ、坂本顔赤いよ?」


一緒にいる橘くんに言われると、すぐさま顔を外らす坂本くん。



「そ、そんな事ないよ。暑いんだよ今」


「え?そうかなー?今まだ5月だし暑いって事はないと思うけどなー?」



あたしがニヤニヤして坂本くんに言う。


ふふ、イジってやる。



「ちょ、宮本さんまで……あげたお土産返してもらってもいいの?」


「やーだ、せっかく貰ったんだから!」


「……宮本さん楽しんでる?」


「だって坂本くん面白いんだもん」


「はぁ……、勘弁してよ」



タジタジになっている坂本くん。


可愛い。













そして無事に楽しかった遠足も終わり、ただ今自宅。



「ふふっ、可愛い」



早速坂本くんから貰ったアロマキャンドルを部屋に飾ってみる。


使うの勿体無いから飾るだけにしよっと。




…にしても、

坂本くんの告白の返事どうしよう。



いまだに返事はゆっくりでいいって言ってるけど…このままずっと待たせる訳にはいかないよね。



いい人だし、優しいし、可愛いし、問題ないから付き合ってもいいのかなー?



「うーん…」


それは違うか。坂本くんの性格とか人間性を知ってしまった以上適当に付き合えないや。



そもそも好き…なのか?


たまに…ドキドキしちゃうけど、このドキドキは好きって事なのかな?




「あああああーーっ!」


もう分かんないっ!






ベッドに潜り込み、そのまま眠りについてしまった。









3日が経ち、涼介くんの教育実習も残り1週間となった時。







「ええええええええええーーーっっ?!?!」




胡桃の叫び声が教室中に響き渡った。



「ちょっと!バカ!うるさいってば!」


「だ、だだだって!びっくりしすぎてこんなん叫んじゃうに決まってるでしょうよ!」



そう。坂本くんから告白されて、返事を待ってもらってる事をとうとう打ち明けた。



「でもそんな気がしたよ。坂本くん、優としかあんまり喋んないし」


「…でもどうしよう。あたしいっつも最近夜寝る前に悩んでんの。返事の事で」


「好きなの?」


「……分かんない。」


「うーん、じゃあ前みたいに何で坂本くんとはすぐ付き合う!とかなんないの?」



それは…



「坂本くんが真面目で優しくて、いい人で…傷つけたくないから…」


「そっか。でもその時点で優はもう成長してるね」


「え?」


「ちゃんと相手の事理解してる。今までは相手の事知らず告白されたらホイホイ付き合ってたじゃん」



あははっ と笑う胡桃。









「じゃあさ、そんなに完璧な坂本くんを何で優は好きになれないんだろう?分かんないって事は好きじゃないんだよ」


「確かに…」


「他に気になってる人でもいるの?」




ーーー。




「……え?」







胡桃にそう言われた瞬間、あたしの頭をくしゃっとする涼介くんの顔が浮かんだ。





「…….別に、いない」




おかしい。

……何で涼介くんが出てきたんだ?




「だったら坂本くんも返事はゆっくりでいいって言ってるんだしよーーく考えてみたら?」



確かにそうだ。



「うん、そうだね!そうしてみる!なんか胡桃に話したらスッキリしたーっ、ありがとう!」


「いやー、でも優が少しずつ変わってきててあたしは嬉しいよ!本当にっ」



胡桃はそう言ってあたしの頬を摘んだ。



「なによぉ〜、あたしがちょー悪い子だったみたいな言い方して〜〜」










「あの、宮本さんちょっといい?」


胡桃と盛り上がってる中、坂本くんがあたしに話しかけた。


…何だろう。



「うん、いいよ。

ちょっと胡桃行ってくるから待ってて!」


「はいはーい、ごゆっくり」



坂本くんに呼ばれ、教室から出る。




「どうしたの?」



廊下で話すなんて…教室ではよっぽどできない話しだったりするのかな?





「あのさ、今週の土曜日空いてる?」



…へ?


「え?土曜日?」


「う、うん……もし空いてたら、その…ぼ、僕とデートして欲しいんだけど…」




で、デート?!










「空いてるけど…」


「いっ、嫌かな?」



うるっとした瞳でこちらを見る坂本くん。


そ、そんな子犬みたいな顔されると…





「嫌じゃないよ!空いてるし…いいよ!」


「や、やったーぁ…」



硬直していた身体が一気にふにゃんと崩れる。



「ふふ、坂本くんってさ意外とどストレートに言ってくるよね」


「え?そうかな…」


「デートのお誘いもだし、その……、こ、告白だって…」



あたしのバカ!

なに自分で言って照れてんのよ。




「そりゃ…好きな人、だから」







…ボッ


や、やっぱりどストレート過ぎる。






「じゃあ、土曜日は宜しくって事で」



坂本くんはそう言って先に教室に入ってしまった。



……デート。

坂本くんとデートの約束をしてしまった。






「青春だなー」



はっ、この声は…っ、


振り返るとやはりそこには涼介くんがいた。




「なに、聞いてたの?盗み聞き?」


「たまたま聞こえてきたんだよ。土曜日は坂本とデートか〜。いいじゃん」



ニヤニヤする涼介くん。



「……涼介くんもデートすればいいじゃん」


「誰とだよ、そんな相手いねーし」



ふーん。

まだできてないんだ、彼女。


…って、何安心してるんだか。




「今回は頑張れよ、坂本いい奴だし」


「………」


「優?」


「ん?あ、うん…そだね…」