季節は春。暖かくも冷たくもない風が吹き抜けて頬を撫でる。私はこの季節が大好きだ。出会いや別れなど人生の中でも自分にとって刺激的な事が多くある気がするから。そんな私も今日から晴れて高校に進学する。
目の前の校門に続く道は立派な桜の木が堂々とそびえ立っていて私を歓迎してくれてるように感じた。桜並木を抜け校門をくぐって歩いていると「紗良ー!おはよう!」と幼稚園の時からの親友、来夢がぽんっと肩を叩いてきた。私達は幼稚園の時からやんちゃなタイプでなにか悪戯な事をしては先生に毎度毎度二人一緒に怒られてきた。そんな来夢と一緒にたわいもない話をしながらクラス発表の貼り紙を確認した。「あ、うちら3組だ!」「ほんとだ!おんなじだ!」とはしゃぎ二人で飛び跳ねながら教室へ向かった。
そして無事入学式も終え、教室へ向かっている時誰かが私の背中にすごい勢いでぶつかった。「ごめん!ほら、お前のせいでぶつかっちゃったじゃねーか!」と同じクラスで出席番号が私と隣の、吉峰涼が数名の男子とじゃれていた。私は「大丈夫だよ。」と返し前に向き直った。初めてクラスに入った時から吉峰くんの周りにはたくさんの友達がいてすぐに人気者だというのがわかった。遠目から見ていても明るくて周りを笑顔にすることが出来る人なんだなと思っていた。そんな人気者にごめんとたったの三文字だけだったのに私に向けられたその声にドキッとしてしまった。
不思議と友達になりたいなとか仲良くなりたいなとか思える人だった。
そんな吉峰くんはよく同じクラスの美人で上級生にも同級生にもモテモテな片瀬亜美ちゃんって子と話してるのをよく見かける。二人はお昼の時間などもアイコンタクトを取り合っては二人で笑みを浮かべていたりと、二人の楽しそうで弾んでいるような表情はまるで恋人のように見えた。でもしばらくしてから聞いた話だと吉峰君は片瀬さんと小学生からの同級生で吉峰君が片瀬さんのことを一方的に好きなのだとか。でも片瀬さんにその事を言うと「やだなぁ、涼と付き合うとかありえないってば」と両想いを否定するらしい。私は片瀬さんと吉峰君お似合いだと思うんだけどなぁ…。という話を来夢としながら「あー私も恋したい」なんて二人して戯言を呟いてみる。でもきっと恋なんて出来ないだろうねって笑い合っていた。
そんな四月はあっという間に過ぎていった。