それより今は条件をのむかのまないか、だ。



「条件、とは?」


「んー、簡単だよ」


結局『いいもん』ってやつが気になってしまって条件をのむことにした。



「その1、夏帆が好きな人…って言うか、蒼衣に自分の気持ちを伝えること」


「…………はぃ」


うー。
自分の気持ちを伝える気ではいたけど…
こんな条件を出されたら、絶対に行かなきゃいけない雰囲気だよ。


「その2」


えっ、まだあるの?


「その2、名前呼んで」


なま、え?


って誰の?



「俺のことはずっと“福島先輩”だっただろ?
蒼衣は“平本先輩”じゃなくて名前で“蒼衣先輩”だったし。
だからせめて最後に“ハジメ”って呼んで。

………これが最後だから」



『最後』


この言葉に含まれた意味は大きい。


だからあたしはこの言葉をムダにしてはいけない。



「ハジメ、先輩…」


これが最初で最後。


もう呼ぶことがない名前。


『ハジメ先輩』