「迷子を助けてもらった時ですね」


「そっ。
高校生になってまで迷子で泣きそうになっている夏帆を助けた時」


「あの時の事は今でも感謝しています」



福島先輩が助けてくれなかったらあたしは国語準備室までたどり着けなかった。


知っている人がいない中、唯一あたしに話しかけてきてくれた福島先輩が『神様』のようだったな…



「俺さ、泣きそうになっている夏帆を助けた時から好きだったんだよ」


「……はい」



仲良く昔話をしている場合じゃない。


もうあの時の事は、思い出。


過去の出来事。



「先輩っ!」


「何?」


「あたしの話を聞いてください」


「いいよ。
夏帆の言いたいこと、ちゃんと聞くから」


「ありがとうございます」



たぶん福島先輩とこうやって学校以外で2人で話すのは今日で最後になると思う。