「本、貸して」
「本?」
どうして蒼衣先輩が本を?
これはあたしが頼まれた本なのに…
「届かないから代わってあげる」
あっ!
そういうことか。
あたしの代わりに戻してくれるのか。
ラッキー!!
「よろしくおねがいしまーす」
「はいよ」
差し出してきた手に本を置き、あたしは蒼衣先輩の後ろへ移動した。
背伸びひとつしないで難なく本を戻した蒼衣先輩から…
目が離せなかった。
スポーツなんてやらないのに背が高くて、
広い背中。
窓から差し込んできた夕日で真っ黒な髪がキラキラ光っている。
『どうして髪を染めないんですか?』
以前、聞いたことがあった。
上級生になれば男子も女子も髪を染めている人なんて沢山いる。
染めていない人の方が少ない。