突然後ろから聞こえた声。
振り向いた方がいいのかなー?
けど振り向きたくない。
「帰ってこないと思ったら…
何しているの?」
「えーっとですね…」
『届かないんです』
だなんて言いずらい。
「届かないんでしょ?」
「…………はい」
「だと思った」
クスクスっと笑う声が後ろから聞こえる。
恥ずかし…
恐る恐る、ゆっくり後ろを振り返ってみた。
けど振り返ってあたしの瞳に映ってきたのは
楽しそうに笑っている蒼衣先輩だった。
「楽しそうですね」
「そりゃね。
届かないのに一生懸命伸びている姿を見ているのは楽しかったから」
ずっと見ていたなら早く助けてよ!
あたしは頑張っていたのに。
その時、スッと出てきた手。
なんだこれ?
何かほしいのかな?
あたしは蒼衣先輩の瞳を見ながら『わからない』と意味を込めて首を傾けた。