「…あの、、消しゴム、落ちたけど……」
図書館で勉強していると、誰かに話しかけられた。
分からないけど、年は同じくらいかな。
「あ、ありがとうございます。」
「うん。………あ、その本、俺も読んだよ。あまり有名じゃないけど、面白いよね。」
彼が指したのは、1冊の小説。
───結翔が、病室でずっと読んでいた本。
「うん、面白かった。言葉が…優しく感じたなあ。」
「うん、俺もそう思う。」
─────彼の笑顔は、君に似ていた…。
しばらく私たちはその本の話題で盛り上がっていた。
彼は、初対面とは思えないくらい、心地がよかった。
「ねえ、名前、なんて言うの?」
彼の言葉に「……はる」と答えると、
「いい名前だね、俺が一番好きな季節だ」
そう言ってさっきと同じように笑って見せた。