「違うじゃん先輩。ため口でいいよって言ったのは先輩だよ。あと、夜空はこんな色じゃない。写真だからわからないんだね」
とあは私の絵に、筆で色を加えていった。水も足りないよこれは、などと言いながら水も付け足す。
うん、知ってたよ。キャンバスから目を離したらこうなることは数日前から知ってた。つまり、数日前にもこんなことがあったということ。
「ほら、さっきのよりこっちのほうがいいっしょ」
とあは自慢げな顔で私を見た。確かに、とても綺麗だった。だから怒ることができないし、というかむしろ感謝なのだけど、一年生に教えられるのは屈辱。
「……うん、そうだね。わかった。わかったから。自分の絵描いておいで」
「あっはは、怒ってる先輩。ごめん、じゃなかった、すいません先輩」
そう言ってあたまを下げながらもとあは笑っていた。ほんとに、ムカつくやつ。
「せんせー、僕外で絵描いてきますー」