「それに、あの容姿でしょ?
言い寄る女はたくさんいたみたいだけど、女の噂なんて無かったもの
幸輝さんはそれなりにあったけどね
それがさぁ、アレでしょ?「俺のだから手つけるなよ?」だったっけ?」
「はぁ……」
あの日お付き合いが始まって、社長……尊さんは企画課で私の肩を抱いてそう言った
社長と一社員の私なんだからもう少し慎重になると思ってたから少し驚いた……
ただ、私達はあの日から何も変わってない
キスはあの時だけ
たまに食事に行くくらいで、休日デートなんて皆無!
"きっとその人は好きでもない人と付き合えるほど器用じゃないんじゃない?"
七瀬さんが言ってくれた言葉はたぶんその通りで
この数日で、尊さんは私の事は大事にしてくれてるし、好意は持ってくれてると思う
私自身はあの時、手を差し出した時にはもう彼に恋してたんだと思う
だから、だんだんもどかしくなってきて…
噂の方がリアルになってきている気がする
"なかなか好きって言ってくれないなら別れちゃいな!好きじゃないなら別れるって啖呵切っちゃいな!"
七瀬さんはそんな事言ってたけど、別れが怖いのは私の方だ
少しずつ尊さんを知って行くなかで恋心は大きくなっている
「社長は麗ちゃんにベタ惚れだよね~」
「そう、でしょうか?」
好意は持ってくれてると思ってる。
でも、私と同じ思いだろうか?
「麗ちゃんを見る目が優しいもん!何か不安?」
「不安と言うか……なんか付き合うときもタイミング的に私が言ったから惰性と言うか……」
「惰性?それはないない!
そんな器用じゃないだろうし惰性で付き合うほどの暇もないでしょ?
それより、麗ちゃんから言ったの?」
「私からと言うか……社長からと言うか……なんか、曖昧です
だからなのか社長の気持ちが見えなくて」
「麗ちゃん……もうっ!可愛い!」
みどりさんはそう言って私を抱き締めた