梨華「おはよー」

美妃「梨華大変よ、のんきにあくびしてる場合じゃない!!」

突然美妃に腕を引かれて廊下に出た

美妃「中川と3年が喧嘩してんの!」

そこにはあざだらけの樹くんと3年生の制服を着た人がいた

梨華「……っ。樹くん……っ」

美妃「なんか……その…」

梨華「なによ!」

美妃「梨華のこと、らしい」

梨華「え…っ?」

美妃「なんか、取り合いみたいな感じなんだって」

梨華「私、行ってくる」

美妃「梨華?!」

梨華「やめて!!!!」

梨華の声で一気に静かになった

梨華「なんでこんなことになってるの?」

樹「梨華……」

梨華「樹くんとは仲良くしてる、でも…あなたのことは知らない!」

3年「好きだったんだ!中元梨華が!」

梨華「……っ!」

3年「可愛くてスタイルが良くて人気者で明るい君が!何よりも好きなんだ…。なのに、そいつが現れてから全て失われた!!」

そして再び樹くんを殴ろうとした

梨華「だめ……っ!」

美妃「梨華!!」

樹「……っ!!」

梨華はその場に押し倒された

押し倒したのは………樹だ

梨華「樹くん…!」

樹「梨華にケガさせる訳にはいかねーだろ」

梨華「……っ!バカ!」

3年「なんだよ………お前らお互い、好きあってるじゃないか!!」

そして3年生はフロアへ走って行った

梨華「樹くん!何やってんの!バカじゃないの……っ」

樹「説得力なさすぎ、なに泣いてんの」

梨華「……だって」

樹「お前が殴られる方がこっちは大打撃なんだよ」

梨華「うそ…なんでこういう時に優しくなるの?樹くんだっていっぱい殴られてるじゃん!顔が……っ」

樹「こんなもん何ともねーよ」

梨華「何とも良くない!」

そっと樹の頬に手を当てる

梨華「今すぐ冷そう、私もついてくから」

樹「平気だってば」

梨華「早く!」

樹「いいんだよ!」

梨華「私が良くないの!樹くんが痛そうなままなのが」

樹「…反則、その顔。また泣きそう」

梨華「お願い…」

樹「わかった、行くぞ」

保健室にて

梨華「先生、あざの手当をお願いします…って、いない」

樹「自分で出来るから」

梨華「私にやらせて」

樹くんの手にあった湿布を取ってつけた

樹「……っ!」

梨華「大丈夫?」

樹「…あぁ」

梨華「ねぇ、どうしてあそこまで無理したの?」

樹「あんな奴に梨華を渡したくねーって思ったから」

梨華「私、樹のものになった覚えないよ?」

樹「知ってる。でも、体が勝手に動いた」

梨華「え…っ?」

樹「あいつと梨華が付き合ったら梨華はドン底なんだろうな…とか思ってたら、動いてた」

梨華「ドン底って……。でも、ありがとう」

樹「は?」

梨華「そこまで私を大事に思ってくれて」

樹「大事にされるのは嫌か?」

梨華「ううん」

樹「…俺さ」

梨華「うん」

樹「正直怖かったんだ。3年だし、力は強そうだったから」

梨華「そうね」

樹「でもそれよりも、梨華が奪われるってことの方が怖かったんだ」

梨華「……っ」

梨華(どうしよう…。胸が、苦しい)

樹「梨華、お前を守りきれなくてごめん」

守りきれなかった…?ううん、そんなことない

梨華「樹くんは私の全てを守ってくれたよ!心も。私……っ!」

樹「しっ」

口に人差し指がおかれた

樹「必死になりすぎ、また涙目」

梨華「あ…っ」

樹「笑ってろよ」

梨華「むり…」

樹「梨華」

今まで聴いたことのないほど優しい声で呼ばれた

梨華「……っ」

抱き締められた

樹「お前だけなんだよ、こんなに触れたくなるの」

梨華「樹くん…っ」

樹「見てるだけでそわそわして、目の前にいると触れたくなる」

梨華「私も、樹くんに触れたかった……」

樹「お前は俺の特別だ」

ずっと、樹くんの"特別"が欲しかった―…

梨華「ありがとう…」

樹「おう」

樹くんの特別は優しくて心地よかった
でもまだ、この気持ちに名前をつけることが怖い……