中学2年生の春、私は恋におちた

梨華「新学期そうそう寝坊!!私のバカー!」

そんなことを言いながら通学路をダッシュしていた

桜なんて気にしている余裕はない

梨華「きゃっ!」

制服の靴が走りづらく、転びそうになったとき―…

樹「おっと!」

梨華「…え?」

転ぶ瞬間、誰かに抱きとめられた

樹「大丈夫か?」

梨華「う、うん」

樹「お前って…。中元梨華(なかもとりか)?だっけ」

梨華「そう。あなたは…、中川樹(なかがわいつき)くんだよね?」

樹「そ。あ、やべぇぞ!俺ら遅刻!!」

梨華「あぁっ!そうだ!早く行こ!」

樹「おう!」

二人は学校に向かって走っていった

樹「あ…。俺ら、同じクラスだ」

梨華「…ほんとだ。よろしくね」

樹「おー!」

クラスについた時にはみんな席についていた

美妃「梨華!おっそーい!でも先生まだ来てないからセーフだよ」

梨華「美妃、ありがとう」

彼女は矢崎美妃(やさきみき)私の幼馴染

梨華(あれ…?前にどうして樹くんが?)

不思議そうに背中を見つめていると、樹が振り返った

樹「なに不思議そうに見てんだよ」

梨華「いや、なんで私の前に樹くんがいるのかなって」

樹「お前バカ?中川、中元だからだろ」

梨華「あ、そっか」

樹「抜けてんな、お前」

梨華「あはは、ちょっとね」

先生「おはよう、みんな。今日からこの2-5の担任の佐滝怜(さたきれい)だ。よろしくな。何か質問は?」

美妃「先生は何歳ですかー?」

先生「24だ」

生徒「わかーい!!」

イケメンや若いなどの黄色い歓声がクラスに響いた

梨華(先生、これから先が思いやられるわ…)

つい苦笑いがこぼれた

樹「なに笑ってんだよ」

梨華「別に?いちいち振り返らなくていいの」

樹「お前見てると飽きねーから」

梨華「褒めてるの?」

樹「おーよ」

梨華「どうも」

先生「静かに!今日は午前で終わりだからみんな!帰る準備しろー!」

生徒「はーい!」

梨華(楽しそうなクラスだな)

帰り道、私は一人で歩いていた

樹「梨華!」

梨華「え?」

振り返ると樹くんが手を振っていた

梨華「樹くんっ?なんで?」

樹「家、お前の隣」

梨華「………は?」

樹「本当だって」

梨華「うそ!初めて知った」

樹「俺は知ってたけど」

梨華「そうなの?」

樹「行ってみる?」

梨華「…うんっ!」

家に着いて、その隣の家の表札をみた

梨華「中川……」

樹「だろ?入るか?」

梨華「いいっ!じゃあね!」

樹「待て」

梨華「……え?」

樹「明日から、学校一緒に行かね?お前、部活は?」

梨華「…弓道部」

樹「俺は、テニス部。朝練の時間も同じだから行こーぜ」

梨華「うん!」

家にて

梨華「ただいま!」

母「おかえり、クラスはどう?」

梨華「楽しかったよ!」

母「そう、よかったわね。あのね、梨華」

梨華「なに?」

母「お母さん、これから1ヶ月おばあちゃん家に行ってくる。倒れたって連絡がきて、介護が必要らしいの。だから一人になるけど、大丈夫?」

梨華「大丈夫よ!気をつけてね」

母「ありがとう」

部屋にて

梨華「しばらく一人か…」

翌日

梨華「行ってきまーす」

樹「梨華!おはよ」

梨華「樹くん、おはよう」

樹「行くぞ」

梨華「うん!」

二人で並んで歩く桜道を梨華は心を弾ませて歩いていた

樹「やけに笑顔だな」

梨華「そ、そう?」

樹「あぁ」

梨華「…恥ずかし」

樹「恥ずかしがることじゃねーよ、こっち向け」

梨華「……っ」

樹「お前は笑ってた方が可愛い」

梨華「や、や、やめてっ!!」

恥ずかしくて小走りした

樹「なんだよ、からかっただけだ」

梨華「それでもやめてよ!可愛いなんて」

樹「本当のことを言っただけだ」

梨華「もう…。着くよ!」

樹「へいへい」

梨華「樹くんって、軽いの?」

樹「全然」

梨華「そう…。じゃあね」

樹「おー…」

部員の元へ走って行く姿を見て樹は思った

樹(可愛いなんて言葉、女子に言ったの初めてだし…)

テニス部員「樹!コート行ってるぞ!」

樹「あぁ!」

梨華を見つめて、コートへ向かった

──キーンコーンカーンコーン……

梨華「おはよー」

美妃「おはよ、梨華」

梨華「んー」

美妃「どうしたのよ。恋の悩み?」

梨華「そんなんじゃないけど。私が恋とかありえないし」

美妃「そーお?うちはそー見えるけど?」

梨華「なんで…」

美妃「誰かを考える目をしてた」

梨華「……」

美妃「お?」

梨華「もういいでしょ!」

4時間授業を受けて、昼休みになった

美妃「梨華、食堂行こ!」

梨華「うん!行こ!」

美妃「てかうち、今金欠〜」

梨華「そんなこと言ってもおごんないから」

美妃「けーちー」

梨華「ふふっ」

私が通っている希望学園は大きくて広い。
食堂や売店もあり、制服も可愛い。

美妃「見て!これおいしそう〜」

梨華「ほんと…。これにしよ!」

美妃「100円ちょーだい!」

梨華「はいはい」

二人で今日のおすすめランチを頼んだ

美妃「おいしいっ!私の選ぶものは最高ね」

梨華「それについては同感」

笑いながら食べている姿を樹は見ていた

樹「あいつらはいつも仲良しだよな」

勇真「なんだ、嫉妬か?」

樹「そんなんじゃねーよ」

彼は武井勇真(たけいゆうま)樹の幼馴染

勇真「梨華ちゃんを見るお前の顔は切ないなぁ」

樹「あっそ」

梨華「美妃は、好きな人いる?」

美妃「いなーい!この学園にいい人いる?」

梨華「いるっちゃ、いるかもよ?」

美妃「なぁによ、いきなり」

梨華「べつに?恋バナとか、美妃喜ぶでしょ?」

美妃「まーね。でも最近は何も無いからなぁ」

梨華「ほんとよね…」

5時間目が始まるチャイムが鳴った

梨華「戻ろ、美妃」

美妃「うん!」

梨華「2-5って食堂と売店が地味に遠い…」

美妃「ほんと!2-1が羨ましいわ」

梨華「ね〜」

美妃「梨華は青春してそうでいいよね」

梨華「そんなことないよ。私は美妃の方が青春してそうだけどね」

美妃「えぇ?」

梨華「だって、可愛いし、スタイルいいし」

美妃「梨華の言ったことそのままお返しします」

梨華「えぇっ?」

二人「ふふっ、ははっ!」

美妃「うちさ、ふと思ったんだけど」

梨華「なに?」

美妃「いや、この学園って贅沢だなぁって」

梨華「確かにね。大きくて広いし、食堂に売店」

美妃「制服は可愛い」

二人「最高の学園!」

美妃「梨華もそう思った?」

梨華「美妃もそう思った?」

二人「さすが幼馴染!!」

梨華「早く行こ!始まっちゃう!」

5時間目中……

樹くんから手紙が回ってきた

梨華「…え?」

樹「読んで」

梨華へ
国語が一番ヒマなんだよ。お前、国語できるか?俺不得意なんだよ…。返事待ってる 樹

梨華「ふふっ…」

樹くんへ
国語得意だよ!一番好きかも 梨華

樹「さすがじゃん…」

そしてしばらく二人の手紙のやりとりは続いて……

梨華へ
今度俺の家で勉強会しないか?国語教えてくんね?

梨華「勉強会……」

樹くんへ
もちろん。いいよ!

樹「よっしゃ…」

5時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った

樹「じゃ、明日の放課後でいい?」

梨華「…うんっ!」

翌日

梨華「…どうしよう。私、男の子と二人っきりになるの初めて………」

樹「紅茶しかなかったけど、いい?」

梨華「うん、ありがとう」

樹「ここがわかんねぇんだよ、教えて」

梨華「ここは…古文か」

梨華「古文の問題を解く時は……」

こうして私たちの勉強会は続いていった

樹「サンキューな。今日はここまでにしよーぜ」

梨華「そうね、ありがとう」

樹「こっちこそ」

二人の間に気まずい空気が流れる

梨華「……っ」

梨華(目が合うと、逸らせない…っ)

目を逸らすと……

樹「逸らすな」

梨華「…だって…」

樹「恥ずかしくねぇから。こっち見ろ」

梨華「あ…っ」

樹くんが頬を手で包んだ

樹「梨華」

梨華「は、はい…っ」

樹「…」

梨華「………っ///」

樹「お前は笑ってろ」

梨華「……は?」

樹「なんだよ、思ったこと言っただけだ」

梨華「今の雰囲気で?」

樹「今の雰囲気ってなんだよ」

梨華「鈍感っ!おじゃましました!」

樹「ちょ、梨華!」

梨華「ただいま!」

梨華「あ…。誰もいないんだった…」

静まりかえったリビングを見渡した

梨華「こう見るとこの家も大きいなぁ」

その頃

樹「なんだよ、あいつ。連絡してみよ」

梨華「ん…?樹くん…?」

"さっきはなんか悪かったな"

梨華「なんか、ってなによ!」

"別にいいわよ"

樹「別に、ってなんだよ!」

ずっと連絡は続いた
こうして私の物語が幕を開けた………!