【市野家 紅美の部屋】

開けた窓から入って来た風が レースのカーテンを 優しく揺らしていた、
紅美は ベットに寝転がりながら 部屋の天井を眺めていた。

「ナニになりたいんだっけ、、わたし」

心の声が漏れた。

「おばあちゃん、、、私って何にむいてんだろうね、、、」

壁際の本棚に夕陽があたっているのに気がつき

「もう、こんな時間かぁ」
そう言いながらベットから 立ち上がった。

窓の外を見ると、真っ赤な太陽は えんぴつで描いたような真っ直ぐな水平線に 乗っかろうとしていた。
高台にある市野家の紅美の部屋からの眺めは 紅美の ちょっとした自慢だった。

窓から少し顔をだし 天辺の方を 見上げると、夜色の蒼い空は静かに、そこにあり、 そっと気づかれないようなスピードで、夕暮れの時を秒刻みで 宵闇に吸収していった。
夕焼け空と呼ばれる時間は短い、ほんの少し違うことに気をとられていると 夜なっていたりする。