【カフェ ラスボラ】

海岸通り沿いにある カフェ『ラスボラ』。
扉を開けて中に入ると 観葉植物の緑が優しい空間に 10席ほどのカウンター席と、大っきな窓際に4人がけのテーブル席が みっつあり、壁際には120センチ水槽があった。
その水槽わきの階段を下りて行くと、二人がけのテーブル席が4席あり すべてのイスがガラス越しに海に向いていた。
窓はテーブルごとにあり 横はテーブル幅で、高さは90センチ程の額縁のようになっていた。
紅美は、キューブ形の45センチ水槽に1番近いカウンター席が お気に入りだった。

「そろそろ海も静かになり始めましたね」

「海洋祭が終ると この町に秋が来るんだよなぁ」

「盛り上がりましたね」

「テレビの中継も入ってたからな今年は」

「ですね、、、、マスター、このちっちゃな魚は何て名前なの?」
紅美は水槽に くっつくくらい近づいて 眺めていた。

「ミクロラスボラ-ハナビって言うんだよ」

「へぇ~、はなびって名前なんだねー、ちっちゃいけど綺麗な魚ですね。向こうの でっかい水槽に群れで泳いでるのは?」

「向こうのは、ラスボラ-ヘテロモルファって魚だよ。紅美は魚の写真は撮らないのか?」

紅美は プロの写真家で 風景写真、主に空の写真を撮っていた。

「撮ってみよーかなぁ」

「うんうん、家の魚たちも 撮ってよ(笑)」

「うん、、、、、でも 空を撮るのに飽きたらね」

紅美は、水槽を覗きこみながら言った。