──ガシャンッ。
突然、ガラスの割れるような音が鋭く響いて驚いた澪は奥の教室に目を移した。
澪たちのクラス、3組の窓ガラスが割れている。すぐに、その周辺に人だかりができた。どうやら教室の中で喧嘩が起きているらしい。
時々、男の怒鳴り声がした。
一体、誰が。
澪と恭介は目を合わせ、その場に駆け寄った。
教室に入ると、そこは机や椅子が所々に倒れて荒れていた。
「なにをやってんだよ、あいつ」
野次馬に見守られる中で二人の男子生徒が掴み合いの喧嘩をしている。
それを見た恭介がすぐに二人の間に入った。
「おい、やめろよ」
「うるせえな。離せよ」
「いいからやめろって。おい、ヨネ」
ヨネは恭介の止める声に聞く耳持たず、相手の胸ぐらを掴んで離そうとしない。
相手はヨネとそれほど親しくはないクラスメートの佐藤だ。殴られた拍子に唇を切ったのか血がついている。
「てめえ米原。いきなり何しやがるんだ」
「おまえが悪いんだろ」
「ヨネ。聞けって」
「どけよっ、キョウ」止めようとする恭介の腕をヨネは強引に振り払い、佐藤に刃向かった。
「やめろって」
「うるせえ」
「ヨネ」
「こいつが悪いんだよっ。こいつが…佐藤が悪いんだっ」
「おまえが勝手にキレてるだけだろっ」
「先生はそういう人じゃねえんだよっ。何も知らねえおまえが軽々しく先生の悪口言ってんじゃねえよっ」
食ってかかるヨネに対して、佐藤は嘲笑を浮かべていった。
「あばずれ教師だろ。あんな女」