「秋谷の彼氏?」


恭介は眠たそうに目を擦る。

この間ヨネのコンビニエンストアで会ったばかりだが、制服姿の恭介を見るのは久しぶりだった。


「そう、奈美の彼氏。あんたが主催した合コンで出会ったんでしょ。どういう人なの?」

「どういうって…」


恭介は聞いているのか聞いていないのかうつろな目でぼーっと空を眺めたまま動かない。

そんな恭介の足を、澪は思い切り踏んづける。

恭介の叫び声が廊下に響いた。


「目、覚めた?」

「ふざけんなよ、おまえ。バイトで徹夜明けなんだから少しはいたわれよ」

「そんなことより、奈美の彼氏はどういう人なの?」

「秋谷に聞けばいいじゃん」

「顔は知ってる。この前写メ見せてもらった。坊主に剃り込みが入ってて目が鋭くて、見るからにやばそうな人だよね。ドタキャンも平気でするらしいし、奈美からはいい話あまり聞かないよ」

「そこまで知ってて、それ以上健二先輩の何を知りたいんだよ」

「…先輩って?」

「一応、中学ん時の先輩だからな」

「そう。その健二先輩って、やっぱり見かけ通り怖い人なの?」

「さあ」

「真面目に答えてよ」


恭介はため息を吐いた。

微かに煙草の苦い香りがする。