メイクで目のくまをどうにかして隠そうと悪戦苦闘をしていると、澪の携帯電話にメールが一通届いた。
相手は奈美だった。
「今日一緒に登校しよ。実は今、澪の家の前にいる」
えっ、と澪はすぐさま窓を開けた。
「おはよう。澪」
そこには道の真ん中で、手を振る奈美の姿があった。
「どうしたの?奈美の家反対方向でしょ」
奈美は特別な意味はない、と答えるだけでにこにこと笑っている。
明らかに怪しい様子だが、これ以上問い詰めるのもなんとなく悪い気がして、澪は口を閉じた。
高校に近づくにつれ、狭い道は次々と同じ制服を来た人たちで溢れる。
昨日から衣替えになり、周りの白いシャツが眩しい。
「ねえ、暑くない?」
「ううん、ちょうどいいよ」
奈美は半袖のカッターシャツの上に、もう季節外れのカーディガンを羽織っていた。
「にしたってカーディガンは着なくてもいいんじゃない?今日一番暑いよ」
テレビでは、今年一番の暑さだと天気予報が言っていた。
「いいの。奈美は寒がりだから」
「ふうん」
「でも、ちょっと暑いかな」
と少しだけ袖を捲る奈美に、澪は苦笑した。