「……プライドか」

 確かに俺にもプライドはある。

 これでも自尊心は強い方だと思っているので、『やられたら倍返し』と『やられる前に潰してしまえ』が俺の信条だ。少々、自尊心とは違うところの話だけど、俺はやられっ放しは好きではない。

 が、しかし――。

 この状況でプライドうんぬんを言っている場合ではない。

 寧ろ、今はプライドを質屋に入れてでも家に帰りたい気持ちが勝っている。家に帰ってゆっくりと晩御飯を食べて、好きな本を読んで、昨日深夜にやっていた映画を録画したので見るのを楽しみにしていたのに、その全てを副生徒会長と部長に邪魔されたわけだ。

「答えを見て、さっさとここを出るか」

 胸の奥に渦巻くちょっぴりダークでブラッティな心を押さえ込み、最初に塗り潰したページの隣を黒く染めていく。しかし、黒くなったページを見て違う意味で俺のプライドは木っ端微塵に砕かれていった。

 『こんなところまで塗り潰して暇人ですね。あなたはプライドを捨てて馬鹿正直にここを擦って、そしてこれを見て怒りを覚えてますよね? それとも面倒な事は相変わらず嫌いですか? 伏峰智樹さん』

 そこに書かれていた内容は完全に俺を名指して馬鹿にしていた。そして、ページの最後には『あなたの恋人』と書かれていた。


 ……これは。


 それによく見てみると、恋人の『恋』の字を『変』と書いてわざと消したようにして上に書き直している節がある。もし、この暗号を考えたのが”あいつ”なら、厄介な事になりそうだな。