「んーっ……はうう」
「どうしたの、律子ちゃん」

 頭から抜けるような声を出し、ヘナヘナと座り込んだ律子ちゃんが俺を振り返って――
「意味が分かりませんよお」
 と、涙をいっぱい目に溜めて一言。

 そんなに簡単に分かったら意味がないって。それにただ声に出しているだけでは分からなくなるのは当然だ。

「この紙に書きながらやった方がいいよ。それと……ん、この部屋はペンがないのか?」

 俺はソファから立ち上がってデスクの上にあったノートから一枚引き千切って律子ちゃんに差し出し、書くものを探したが目に付くところにはなかった。

「あっ、探します」

 目元に溜まった涙を拭いながら立ち上がった律子ちゃんはデスクの引き出しを開けたが、あまりの状況に固まって俺を見上げていた。

「……す、すごいですね」
「だね。まあ、探し物は見つかったからいいじゃない」

 その引き出しの中には無数のペンが入っていた。ボールペン、マジック、サインペン、羽ペン……世界中のペンがここに揃っているのではと思うほどの品揃えでお店が出来そうだった。

「あ、あれ? ……でも、このペンおかしいですよ」
「ん? 見せて」

 律子ちゃんが持っているボールペンを取り上げて見てみると、肝心なものがなかった。