まあ、この人を相手にするには自分も馬鹿にならないと無理だという判断から誰も相手にしないのだが、そんな副生徒会長も顔”だけ”は綺麗系なのでファンクラブが存在し、その会員は『下僕』と呼ばれている。

 つまりはここにいる男子生徒達は皆ファンクラブの会員という事になる。まあ、胸にあるバラのコサージュですぐに分かったけどね。あのバラのコサージュは副生徒会長に忠誠を誓った証で、一般生徒には別名『華の呪縛』なんて言われている呪いのアイテムみたいなものだ。

「さあ、翔様。一緒に参りましょう」
「え、いや……僕は、その」
「私達の愛の巣へ急ぎましょう、ダーリン」

 聞いていて背中に虫唾が走って行く。

 この調子からも分かるように、副生徒会長は変態部長にぞっこんラブなのだ。

 今時ぞっこんラブって言葉を使うのは恥かしいが、副生徒会長の盲目ぶりな愛は一途を通り越して恐怖すら感じる域に達している。

 簡単に言えばストーカー。

 それもかなりのマニアックストーカーで、男子トイレや更衣室にも平気で出没するはた迷惑な人だ。

「ほら、早く行きましょう」
「あ、やっ――ともちゃんヘルプミーっ」

 無理やり足を掴まれて引きずられていく部長が俺に手を伸ばして助けを求めているが、ここは心を鬼にして……いや、普通に無視をしよう。


 ……頑張れ、部長。


 もう帰ってこないかも知れない部長に線香の一本でもあげようと思ったが、お金がもったいないので止めておく事で結論が出た。