「……いたんですか? 部長」
「ちょっ――いたよーっ、ともちゃん。」

 俺の背後から忍び寄って抱きついて来た変態部長が頬ずりをして甘えたような声を出していた。

 料理に夢中になって存在すら忘れていたが、そう言えば視界の隅で何かが走り回っている姿がチラチラしてうっとうしいと思っていたが、あれは部長だったのか。

「りっちゃんの手料理、僕も食べたいのっ」
「食べればいいじゃないですか。それより、離れてください……暑苦しくて汗臭いです、部長」
「僕の汗はレモンの香りさ」

 意味不明な事を言っている変態部長は俺から離れる気配がない。


 ……要約すると、汗臭いっ事か?

 先ほどまで火の前にいたので全身が汗だくで、扇風機やらお茶やらで何とか汗が引いてきたところにこの変態部長が何をしやがるんでしょうね……部長自身も汗をかいて気持ち悪い事になっているのに、それを俺にくっつけてくるなんて――。

「天国に逝きますか? 部長」

 とりあえず、怒りが収まらないが暑苦しいのでアイアンクローで引き剥がす事にしよう。