「律子ちゃん、パンツ丸見えのところ悪いけど」
「え? あ……きゃあ、きゃあっ」

 和音さんに弄(もてあそ)ばれて放心状態だった律子ちゃんを揺すって起こし、この状況を打破させようとしたのだが逆効果だったようだ。

 まあ、和音さんがスカートを全てパンツの中に押し込んで「ちょうちんブルマ」って叫んでいたので俺もバッチリ見ていたわけだが、止める気はまったくなかった。これも男の性というやつでしょうな。

「伏峰先輩に見られたーっ」

 まあ、いつもの事だよ。

「今日のは勝負パンツじゃ――いえ、別に勝負をするつもりはっ」

 誰と何を勝負するのでしょうか?

「伏峰先輩のばかーっ」

 何故、俺が馬鹿なのでしょうね?

 泣き喚きながら部室を飛び出した律子ちゃん。その手には近所のスーパーで買ったらしき買い物袋を持ったままで――
「ああっ、私の鶏肉が……私の鶏肉が走っていくっ」
 それを見て泣き崩れる和音さんが「カンバック、コッコちゃんっ」と叫んでいたりするわけで。


 ……とり鍋だったんだ。


 盛大にため息を吐きつつ、俺は床に散乱したお鍋の食材達を嫌々ながら拾い集めていた。