ハッとして、私は思わず顔を上げてしまった。

…あ、やばい。顔見られちゃった。

私がバカだって事、相手に——。


「類くん…!?」

「はい、何?」


私を助けてくれたのは、紛れもなく類くんだった。


「俺の事、知ってたんだ」

「あ…うん、まあ。一応、同じ学年だし。
その、人気あって…有名だし」

「ありがとう。でも、あんまり期待しないでね。
俺、別に普通の人だから」

「いい人だよ!!」


私は思わず、そう叫んでしまった。

案の定、類くんはきょとんとしている。


「…いい人だよ、類くんは」

「そっか、ありがとう。小泉さんも、いい人だね」

「そんなことないよー」


私がもし仮にいい人だったとしたら、今みたいな事にいちいち引っ掛かったりしないだろうし。

それにもし私が類くんの立場だったら、きっと見て見ぬフリをすると思う。怖いから。


「あの…さ」

「はい?」

「沢村、俺の事避けてるよね?」