私は驚いて、思わず手を引っ込めた。
途端にオジサンは、ちっ、と舌打ちをした。
「邪魔すんなよ、このガキ」
「邪魔?一人の人間の命を救ったのに、それはないでしょう」
「命を救った?…ふん、大袈裟な。
これ貰おうとするようなバカの命なんて——」
「バカはどっちですか?
クスリやって、それを売る事でしか生きていけない、あなたの方ではないですか?」
「この野郎…っ」
オジサンが何か言おうとした時、電車が次の駅に着いて停車した。
ドアが開くのと同時にオジサンは立ち上がり、覚えてろよ、と言って電車を降りていった。